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OSAKA SEIKEI PRESS

データサイエンス=「人と社会」の課題を解決し、生活を豊かにする実学。
高い人間力を持ったデータサイエンス人材を育成したい。

大阪成蹊大学副学長?データサイエンス学部設置準備室長(2023年4月~ 大阪成蹊大学学長)中村 佳正 教授

昨今注目が集まるデータサイエンス。言葉は頻繁に聞いたことがあっても、あまり身近に感じないという方も多いかもしれません。データサイエンスとはどのような学問なのか、データサイエンスを学ぶ上で大切なことは何か。また西日本の私立大学で初となる大阪成蹊大学データサイエンス学部(※1)の特徴について、中村教授(※2)に伺いました。
※1令和4年10月27日(木)付で文部科学省より設置認可されました。(11月9日追記)
※2令和5年4月より大阪成蹊大学学長。(4月10日追記)

データサイエンスは私たちの生活を豊かにするための「実学」。

データサイエンスと聞くと「理系の学問」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、データサイエンスは「サイエンス」でありながら、私たちの身近な生活を豊かにする文理融合の「実学」であり、人と社会に関係する全ての領域に活用されています。

生活の中の身近なデータサイエンス

たとえば、皆さんがよく目にする台風の進路予測図は、近年AI(人工知能)の力により非常に精度が上がっています。過去の膨大な数の衛星画像データをAIに読み込ませ、画像解析によって似たパターンを抽出することで気象変化を予測する方法があります。たくさんの画像データを高速で処理して似たものを見つける、これはまさにAI、データサイエンスが最も得意とするところです。
もう一つ身近な例を挙げれば、インターネット上の検索履歴や購入履歴などのデータに従って、様々な広告やおすすめの商品の情報が提示される、これもデータサイエンスがビジネスに活用されている代表的な例と言えます。

将来の志望が定まっていない人こそデータサイエンスを

こういった自然現象やビジネスにおける事例はもちろん、スポーツ?医療?教育?芸術?観光など、あらゆる分野でデータサイエンスは活用されています。つまりデータサイエンスのスキルを学ぶことは、どのような業界でも活躍できる可能性を広げることに繋がります。
逆にめざす分野がはっきりと決まっていないという方も、データサイエンスを学ぶ中で様々な分野に触れ、新しい発展を目の当たりにする中で、自分が進みたい方向を見つけることもできるでしょう。それはデータサイエンスならではの魅力ですね。

データサイエンスの学びは「人間力」を養った上に積み上げるもの

データサイエンスの基礎には数学や統計学、コンピュータ?ITについての情報学など体系だったサイエンスの学びがある程度の割合を占めますが、先ほども言ったようにデータサイエンスは人と社会に関係する実学ですから、社会への高い関心や人としての共感力、周囲の意見をヒアリングして自分の考えを適切に伝えるコミュニケーション力、広い視野で提案を行う俯瞰力、データを扱う上での倫理観など、本学において「人間力」と呼ばれるような素養の部分が非常に重要です。
そうした素養が身についていない上に理系科目の学びを積み上げようとしても消化不良になってしまい、ましてそれを人や社会との対話に活用することはできません。

データサイエンス+人間力を培う新しい試み

2023年に大阪成蹊大学に開設予定のデータサイエンス学部では、人間力の土台を身につけるために、初年次教育からグループ単位で課題に取り組みディスカッションやプレゼンテーションを行う「スタディスキルズ」やアクティブラーニング型の学び「未来クリエーションプロジェクト」を開講する予定です。
データサイエンスを扱う学部でこういった学びを重点的に実践しているところは決して多くありません。中でも企業連携授業においては、大手企業に限らず地域に立脚した中小の企業や自治体とも活発に連携し、新しいデータ活用の提案を行う経験を積んでもらいたいと考えています。

他学部との連携により、大学全体の情報教育力の強化に貢献

クロスオーバー科目などによる他学部との結びつきも重視しています。本学では経営、スポーツ、観光、教育、芸術などデータサイエンスと親和性の高い分野の学びが多く展開されています。データサイエンス人材としてどの分野で活躍していきたいか他学部の学びを通して考えることができる、これは文理融合の総合大学ならではの強みです。
また、他学部の学生にデータサイエンスの学びに親しんでもらえる授業「データサイエンス基礎」と「統計学基礎」を2022年度から開講します。データを扱うスキルはどのような業種でも重宝されますからね。データサイエンス学部の開設を大学全体の情報教育力を強化するための契機にしたいと思っています。

データサイエンスは性別を問わず活躍できる分野。社会のリーダーとなるような女性を輩出したい

データサイエンス学部には多くの女子学生に入学してほしいと考えています。
私が以前在籍していた大学の情報学科では女子の割合が10%を超えたことはありませんでした。現在国内にあるデータサイエンス系の学部では女子の割合は約20~30%前後と、これまでのIT系学部よりは高い割合になっており、データサイエンスがIT系とは少し違って、身近なところで将来の仕事をイメージしやすいという点が理由としてあるようです。

データサイエンスは、女性の新しいキャリアを切り開く

データサイエンスは今話題のSDGs(持続可能な開発目標)の実現のためのあらゆる課題に貢献すると言われますが、「ジェンダー平等の実現」もその一つ。データサイエンスは性別を問わず活躍できる分野であり、女性の新しいキャリアを切り開く期待の分野でもあります。大阪成蹊大学のデータサイエンス学部が、社会のリーダーとなるような女性のデータサイエンス人材の育成を牽引する存在となることを願っています。

AIを用いた学問でありながら、人間にしかできない仕事

AIが発展すればするほど、世の中のあらゆる仕事がAIに取って代わられるという話をよく耳にすると思います。
では、AIにできる仕事はAIに任せてしまい、データサイエンス人材がAIを使いこなしたらどうでしょうか。AIによって膨大なデータから人と社会のために役立つ価値=「宝」を見つけ出すこと、そしてデータを活用した新たなサービスを提案?実現していくこと、これは先に述べた「人間力」を持ったデータサイエンス人材にしかできない仕事です。

学生時代でも、社会人になった後でも、「自分で考えて課題を解決した経験」というのは人生のいつの時代にも残る財産となります。データを使った人と社会との対話や共感に興味がある人は、ぜひデータサイエンスという将来性ある新しい学問を学んでみてください。

【関連リンク】
◆データサイエンス学部特設サイト
/lp/data_science/
◆データサイエンス学部紹介
/department/data_science/
◆中村 佳正教授 教員紹介
/department/data_science/teacher/221

PROFILE

中村 佳正 なかむら?よしまさ
京都大学では、大学院情報学研究科研究科長、情報学系長、理事補、学際融合センター長、工学部情報学科長、ボート部長等を歴任。現在は名誉教授。2023年4月に大阪成蹊大学 学長に就任。